息切れとは
息切れは酸素不足を補うために激しい呼吸を繰り返している状態で、呼吸困難や息苦しさも同じ状態です。呼吸器症状ですが、多くの心疾患でも息切れの症状を起こし、深刻な疾患が原因で生じていることもあります。坂道や階段で息切れする、平地を普通のスピードで歩いても息切れする、すぐ呼吸が荒くなる、浅くて速い呼吸を繰り返す、深い呼吸をはさまないと苦しくなるなどの症状がある場合は、早めにご相談ください。
息切れの原因
(動悸・息切れを伴うとき原因は何?)
血液は肺で身体から回収してきた二酸化炭素を放出し、酸素を取り込みます。酸素を取り入れた血液は心臓から全身に酸素を届けて二酸化炭素を回収します。酸素供給と二酸化炭素排出の機能低下や血液循環が悪化すると酸素不足を起こし、それを補うために呼吸が荒くなって息切れします。息切れは深刻な心疾患などを原因に起こることがあり、今まで息切れせずにできていた動作や運動で息切れするようになったら循環器内科を受診してください。
下記、動悸と息切れを伴う場合に考えられることです。
心臓関連の問題
心臓の異常や疾患が動悸と息切れを引き起こすことがあります。例えば、心房細動(不整脈の一種)や心不全(心臓が効率的に血液を送り出せない状態)、弁膜症(心臓弁に問題がある状態)などが考えられます。
肺関連の問題
呼吸器の異常や疾患も動悸と息切れを引き起こす可能性があります。肺炎、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺塞栓症(肺動脈に血栓が詰まる状態)などが含まれます。
不安やストレス
強い感情的なストレスや不安は、自律神経のバランスに影響を与え、動悸や息切れを引き起こすことがあります。パニック障害や不安障害の症状としても現れる場合があります。
貧血
貧血(赤血球やヘモグロビンの量が不足している状態)は、酸素供給が不十分になり、動悸や息切れを引き起こすことがあります。
運動や身体的な活動
運動や身体的な活動中は、心拍数が上昇し、呼吸が速くなるため、一時的に動悸や息切れが起こることがあります。これは正常な反応ですが、過度な運動や運動時の心臓や肺の問題も考慮する必要があります。
息切れを伴う疾患
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
息切れを起こす代表的な呼吸器疾患です。毒性のある物質によって肺の機能が少しずつ失われていく進行性の疾患で、呼吸不全に陥って亡くなってしまうこともあります。主な原因は喫煙であり、受動喫煙もリスク要因です。また毒性のある化学物質などで生じることもあります。インフルエンザや風邪で重症化しやすく、感染症にも注意が必要です。
気管支喘息
アレルギーによって気管支に慢性的な炎症が続く疾患です。ちょっとした刺激で気道が狭くなり、喘息発作を起こすとヒューヒュー・ゼイゼイという音がする喘鳴を生じます。慢性的な気管支の炎症を改善する治療と、発作の際に気道の狭窄を解消して症状を鎮める治療を行い、発作をできるだけ起こさないようにコントロールしていきます。
貧血
血液で酸素を運ぶ役割を担っているのは赤血球中のヘモグロビンです。鉄分の摂取が不足するとヘモグロビンを充分つくることができなくなり、鉄欠乏性貧血になります。また、胃潰瘍などによる消化管出血など、出血によって起こる貧血も鉄欠乏性貧血です。また腎臓の機能が低下した場合は血液の合成能が低下して腎性貧血を起こします。貧血で体内の酸素が不足すると頻脈、めまい、息切れなどの症状を起こします。
心不全
心臓のポンプ機能が低下して、充分な血液を送り出せなくなっている状態です。様々な心疾患が進行して心不全を起こします。他にも高血圧や貧血、腎臓病、甲状腺機能亢進症、ウイルス感染症、睡眠時無呼吸症候群、化学療法や放射線療法、過度のアルコール摂取・薬物中毒、肥満・加齢・ストレスなど原因は多岐に渡ります。睡眠時無呼吸症候群で心不全を合併している場合、死亡リスクが上昇するという指摘もされています。
狭心症
心臓は全身に血液を送るため休みなく拍動を続けており、その活動を支えるために必要な大量の酸素や栄養を心筋に供給する役割を持った冠動脈があります。狭心症は、この冠動脈への血流が一時的に不足して心筋が酸素不足を起こし、締め付けられるような胸痛や息切れなどの症状を起こす疾患です。主に動脈硬化によって冠動脈が狭窄して生じ、運動などの負荷がかかると狭心症発作を起こします。進行すると心筋梗塞を発症して命にかかわることもあります。
不整脈
心臓の拍動リズムが異常になる状態で、脈が速い頻脈、脈が遅い徐脈、そして脈が飛ぶなど不規則になるタイプがあり、動悸や息切れの自覚症状を起こすことがあります。原因となる心疾患には、心筋梗塞・拡張型心筋症・肥大型心筋症・弁膜症などがあり、他にも高血圧・甲状腺疾患・肺疾患、睡眠時無呼吸症候群などで生じることもあります。経過観察で大丈夫な場合もありますが、治療を必要とする危険な不整脈もありますので、お気軽にご相談ください。
腎機能障害
腎臓機能が低下すると尿を充分につくれなくなって余分な水分の排出が滞ります。それによって、むくみや胸水、腹水などを生じ、血管内の水分量増加によって心臓の負担が増え、息切れなどの症状を起こすことがあります。
更年期障害
更年期は閉経をはさむ前後5年ずつの10年間のことで、閉経に向けて女性ホルモンの分泌が大きく揺らぎながら低下し、自律神経のバランスが崩れることで様々な症状を起こします。主な症状には急激なほてりと大量の発汗をともなうホットフラッシュ、息切れ、動悸、めまい、肩こり、イライラ、倦怠感などがあり、症状の内容や程度も患者さんによって様々です。また、女性ホルモンの分泌が減少すると脂質異常症や骨粗鬆症の発症リスクが大幅に上がり、注意が必要です。
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう病気です。安静時にも頻脈を生じる場合は甲状腺機能亢進症が疑われます。他にも、手の震え、手足のしびれ、微熱、疲れやすい、ダイエットしていないのに痩せる、暑がる、のどのあたりに腫れがあるなどの症状も起こります。女性に多く、更年期障害と似た症状が多いので発見が遅れることがあります。つらい症状が続く病気であり、頻脈によって心臓へ負担がかかりますが、適切な治療で改善できます。
脳出血
脳の動脈が破れて出血を起こす疾患です。出血を起こした場所や範囲によって現れる症状は様々です。高血圧が高リスク因子であり、大きな寒暖差などで血圧が急上昇した際に生じやすいとされています。激しい頭痛、めまい、吐き気、言語障害、意識障害などが突然起こった場合には救急受診してください。脳出血でも呼吸器障害が現れることがあり、その場合には動悸や息切れを生じます。
息切れの検査
息切れは心疾患や呼吸器疾患が疑われますので、問診や血液検査に加え、必要に応じて心電図、胸部X線検査、呼気NO検査、呼吸機能検査などを行い、パルスオキシメーターで血中の酸素濃度を確認します。こうした検査結果を踏まえて、さらにCT検査や血管造影検査、換気血流シンチグラフィーなどの検査が必要と判断された場合には、連携している高度医療機関をご紹介しています。